~今東京で猛威を振るう梅毒、感染が増え続ける理由~

監修:医師 高山貴行

内科。東京都立墨東病院や東京医科歯科大学医学部附属病院を経て、2021年より羽田空港検査クリニックの主任医師として、空港内の検疫業務を始め、渡航医療、感染症対策等に携わる。


東京で感染が拡大している梅毒

近年東京都で爆発的な感染増加をみせる「梅毒」、これは性交渉によって感染していく「性感染症」の一種です。
性感染症として皆さんがよく聞くのは「クラミジア」や「ヘルペス」、「淋菌」などでしょうか。感染症の種類は様々なのに何故梅毒ばかりが話題に上るのでしょうか?また、実際にはどの程度の増加がみられているのでしょうか?

梅毒って一体何?

梅毒は梅毒トレポネーマという菌が粘膜に触れることで感染します。症状は複数段階に分かれていて、初期段階である接触後3~6週間ほどでは感染に気が付かない患者さんも多くいます。
ほかの性感染症に比べて、梅毒の怖いところはこの潜伏期間の長さにあります。淋菌やクラミジアなど、多くの病気は症状が現れるまで約1週間と短いのに対し、梅毒は 1~2ヶ月ほどの期間があります。そのため、感染者が知らず知らずのうちに他人に感染を広げるリスクが高いとされています。

何故東京で増えるの?


近年、梅毒患者は全国的に増加していますが中でも東京都の感染者数は他県に比べ非常に高くなっています。
2021年度の東京の感染者数は男性1577人、女性874人となっており、2022年度は男性2291人、女性1386人にまで増加、2023年度は第一四半期で既に854人の感染が確認されています。
(出典元:感染症発生動向調査で届け出られた梅毒の概要)
その中でも感染の温床として挙げられがちなのが風俗店です
(出典:国立感染症研究所.病原微生物検出情報 2018;39( 5 ):16︲8)。
東京では他県と比べ性風俗店の数が多いことから、結果として梅毒の感染が爆発しているのかもしれません。

「梅毒なんて自分とは無関係でしょ?」

東京を中心に増加している梅毒患者ですが、その内訳には風俗店関係者だけでなく、出会い系アプリ、パパ活、そして立ちんぼの利用などによって感染してしまっている人も多く含まれます。
(出典:マッチングアプリの利用とリスクのある性交経験との関連)
また梅毒は感染力が非常に強く、キスや回し飲みで感染してしまうこともあります。
このため、梅毒は「自分には縁のない話」ではなく、一人ひとりが予防に注意を払う必要がある身近な感染症です。

自分やパートナー、友人など「少しでも気になることがあったら検査を受ける」を心がけ、安心した性生活を送れるよう意識していきましょう。

感染の早期発見、早期治療は自身の身を守るだけでなくパートナーの身を守ることにもつながります。現在では抗体検査のほか、新型コロナウイルス検査にも使用されているPCR検査もあります。