とっても恐ろしいエイズって結局どんな病気なの?

監修:医師 高山貴行

内科。東京都立墨東病院や東京医科歯科大学医学部附属病院を経て、2021年より羽田空港検査クリニックの主任医師として、空港内の検疫業務を始め、渡航医療、感染症対策等に携わる。


エイズって結局何なの?HIVとは何が違うの?

みなさん、一度はエイズという名前を聞いたことがあるでしょう。

しかし、「なんとなくは知っているが、どういう病気かはよく知らない」という方が意外と多いのではないでしょうか。

このコラムでは、エイズについて学んでいこうと思います。

そもそも、エイズとは何でしょうか。

エイズとは、AIDS(後天性免疫不全症候群)の日本語訳で、HIVというウイルスに感染することで、免疫力が大きく下がり、色々な病気にかかりやすくなってしまう病気の名前です。

そう、HIVはウイルスの名前で、エイズとは、HIVの感染によって引き起こされる病気の名前なのです(意外と混同している人が多いので注意が必要です)。

ちなみに、HIVに感染したらすぐにエイズが発症するというわけではなく、体内でHIVが増殖した結果、免疫力が低下し、エイズを発症するという流れです(これは意外と重要です)。

エイズは性感染症の一つとしてとても有名で、性行為により感染することが多いです。

しかし、性行為をしなくても感染することがあります。

一体これはどういうことなのでしょうか?

エイズの感染経路

まず、意外と思われるかもしれませんがHIVの感染力は感染症の中では非常に低い方です(だからと言ってエイズを心配しなくて良いわけではありません。その理由は後述します)。

それを理解するため、エイズの感染の仕方について学びましょう。

エイズは基本的には血液を介して感染します。

つまり、ウイルスが自分の血液の中に入ることで感染します。

そのため、極端な話、傷のない皮膚にHIVを塗っても感染しません。

ただし、粘膜というのは非常に柔らかく繊細なので、微小な傷が多くあります。

そのため、性行為などを介してエイズ患者と粘膜接触をしてしまうと、HIVに感染してしまいますが、一方で粘膜接触の程度によっては性行為をしても感染しないことがあるのです。

また逆に、性行為をしていなくても注射器の使い回しなどによりHIVウイルスが血液中に入ってしまうと、感染してしまいます。

ちなみに、HIVは患者の精液、膣分泌液、血液、母乳に多く含まれます。

そのため、エイズ予防においては、これらとの接触に気をつけることが非常に重要です。

エイズの症状とその本当の恐ろしさ

HIVに感染すると、どのような症状に苛まれてしまうのでしょうか?

HIV感染の初期症状は風邪のような症状なのですが、そこから数年、無症状の期間(HIVは体内で静かに増えています)を経てから、エイズが発症します。

ここからがエイズの恐ろしさの真骨頂です。

先ほど述べた通り、体の免疫力が著しく下がり、多くの感染症にかかりやすくなってしまうのです。

これは、例えるなら、RPGゲームの途中でまあまあ強い敵がいる中、レベル1に戻されてしまうようなものです。

しかも、エイズの恐ろしいのは、現在の技術では完治できないという点です。

つまり、レベル1になった後、もうレベルが上がらないのです。

こう想像すると、エイズの恐ろしさが理解できるのではないかと思います。

エイズ治療の今

エイズは、治療開始が発症前か後かでその後の状況にかなり違いがあります。

先ほど述べた通り、HIVに感染しても、ウイルスが増殖する前であれば、エイズは発症しません。

そして現在では、HIVの体内での増殖を抑えられる薬が存在します。

そのため、HIV感染後すぐに治療を受ければ、エイズ発症を防ぐことができるのです。

逆に、一旦エイズが発症してしまうと、それを治療することは現状できないため、エイズによりかかってしまったその他の病気それぞれに対して逐一治療をしないといけません。

このように、エイズは発症前に発見することが非常に重要です。

そのため、定期的な性病検査がとても大切なのです。