皆さんは、B型肝炎についてどこまでご存知ですか?
肝臓に炎症が起こることを肝炎と呼びますが、その中で最も多くの割合を占めるものがB型肝炎です。
かつて集団予防接種において注射器の使い回しによりクラスターを引き起こしたことで大きく話題になり、母子感染することでも知られるB型肝炎ですが、実は性感染症でもあるということはご存じでしょうか。
B型肝炎の患者は、世界で3億5000万人、国内でも130〜150万人もいます。
そして、その中で性行為による感染の割合は半数以上を占めており、決して低くありません。
(出典:我が国の疫学状況 (専門家向けHBV))
しかし、国内ではB型肝炎は性感染症としてほとんど認知されておらず、血液感染や母子感染によって感染するという認識しかない方が多いようです。
これは、先述した注射器の使い回しによるクラスター(集団感染)のニュースの印象が強すぎるためだと考えられます。
しかし現在では血液感染や母子感染についてはしっかりとした対応が取られており、感染の割合は低くなっています。
一方で、性行為を介した感染が年々増加傾向にあります。
どうしてB型肝炎は恐ろしい性感染症なの?
B型肝炎は、性感染症の一種であり、感染した人との血液と血液の直接接触、精液や膣分泌液、そしてキス等によって感染します。
まずはこのことをしっかり認識していただき、次にB型肝炎の特徴となぜ性感染症として厄介なのかを説明していきます。
B型肝炎ウイルスへの感染は、一過性感染と持続感染という2種類に分類することができます。
一過性感染
一過性感染(急性B型肝炎)とは、感染期間が6ヶ月未満の感染です。
性行為による感染の多くはこのパターンです。
そもそも、B型肝炎ウイルスは多くの場合、健康な成人であれば通常の免疫力により撃退できます。
そのため、大人になってからの感染では、多くの場合一過性感染で終わるのですが、10〜15%ほどの割合で、持続感染へと続いてしまいます。
なお、持続感染へと続かない場合でも、30%ほどの割合で急性肝炎を発症し、1〜6ヶ月の潜伏期間の後に、全身の倦怠感や食欲不振、黄疸や褐色尿などの症状が見られます。
持続感染
持続感染(慢性B型肝炎)とは、6ヶ月以上にわたって感染状態が続いてしまう場合のことで、幼少期に感染してしまったり、一過性感染の際に適切に治療を受けなかったりする場合によく起こります。
持続感染の場合、完治は困難であり、現在の治療は主にウイルスの増殖を抑制し、肝臓の損傷を最小限に抑えることに焦点を当てています。
持続肝炎では、継続的に肝臓に炎症が起こる慢性肝炎を発症し、肝硬変や肝がんなどを発症してしまうケースもあります。
(出典:日本肝臓学会)
ここで、B型肝炎の恐ろしい特徴として、持続感染している患者の9割が特に症状が見られないことが挙げられます。
このような患者のことを無症候性キャリアと呼びます。
症状が見られないなら問題ないように見えますが、実は、症状が無いだけで体内にウイルスがいるうえに、感染力もあるのです。
そのため、こういった患者は、無自覚に感染を拡大させてしまうケースが非常に多いのです。
無症候性キャリアでも肝炎を発症するリスクはあるので、それを防ぐ意味でも、感染拡大を防止する意味でも、定期的な検査は欠かせません。
自分が無症候性キャリアかどうかは検査で調べることができます。
そして、自分自身の感染を予防するためにも、コンドームの利用の徹底や、迂闊に他者の体液に接触する機会は避けるようにしましょう。